国際リニアコライダー(こくさいリニアコライダー;International Linear Collider 略称ILC)とは、超高エネルギーの電子・陽電子の衝突実験をおこなうため、現在、国際協力によって設計開発が推進されている将来加速器計画。日本では、1990年代はじめより、高エネルギー加速器研究機構を中心として、初期に"Japan Linear Collider"と呼ばれ、アジア各国物理学者の参加を得て"Global Linear Collider"へと名称変更され開発が進められてきた構想があった。同時期より、ヨーロッパ (DESY, CERN)、北米 (SLAC) でも類似の計画が構想され、開発に従事する研究者間で、隔年の研究ワークショップが開催されてきた。国際リニアコライダーは、2004年8月に" 国際技術勧告委員会(International Technology Recommendation Panel (ITRP))" が加速器の基本技術を一本化する勧告を行ったのを受け、これらの構想が世界で一つの計画、"International Linear Collider" (ILC) に統合されたものである。
電子-陽電子衝突型の加速器で、最高のビームエネルギーを記録したのは2000年までCERNで稼働したLEP-II(209GeV)であり、最大のルミノシティ値を持つのは、今も高エネルギー加速器研究機構で運転中のKEKBである。CERNでは、LEP実験が終了し、LHC実験(陽子-陽子衝突型)へと移行し、2008年9月10日から稼動された。
陽子-陽子もしくは陽子-反陽子衝突型の実験(ハドロン型とも呼ばれる)では、陽子、反陽子など複合粒子であるハドロン内部にあるクォーク同士の反応が複数並行して起こるなかで、多数の終状態粒子が発生する。そのため、どの終状態粒子がどのようなエネルギーのどのクォーク反応に由来したかの不確定性が常に伴い、データの選別と統計的分析に大きな労力と解析計算を必要とする。
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一方、電子-陽電子の衝突実験(レプトン型とも呼ばれる)では、始状態での電子と陽電子のエネルギーが全部集約され、終状態粒子はすべてそこから生成される。したがって、バックグラウンド事象の排除が容易で、データ解析が比較的簡便、という利点がある。そのため、TeVクラスのレプトン衝突型実験を行おうという計画が、各地の物理学研究者の間での共通の夢であり目標でもあった。
「加速器基本技術の一本化」とは、常伝導型の加速空洞と超伝導型の加速空洞との開発研究の比較の結果、超伝導型の加速空洞の方が、全体システムとしてより高いエネルギー効率でビーム加速できること、空洞内で発生するウェーク場が比較的弱いためビーム品質を保ったまま大電流のビーム加速を行ううえで有利であること、空洞の「Q値」が高い(空洞内に高周波電力の共鳴状態をいったん発生したあとの減衰スピードがゆっくりである)ため、比較的低いピーク電力の高周波源で運転が足り、電力パルス長は増やす必要があるもののピーク電力を増やすよりは楽、などの点で評価され、決定されるに至ったものである。
また、大型直線加速器となったのは、KEKB実験にも記載があるように、電子-陽電子衝突型の実験では、エネルギー損失が発生するという理由がある。初期ブースト段階では、あまり大輝度にはならないため影響は少ないが、衝突実験検出装置近傍では、その影響が顕著となる。そのため、大型直線加速器として計画が立案された。Tevクラスを実現するためには、30Kmを超える直線トンネルが必要であり、これらの用地取得などにも多大な経費がかかると心配されている。そのため、大深度地下利用なども検討に入れて調査を進めている(場所によっては、用地取得経費の方がかからないはずであるが、日本国内で建設する場合には、そのようにならざるを得ない)。